保育園給食鉄分強化大作戦！！

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乳児の鉄欠乏と、こころとからだの発達

乳児期の発達との関連で、「乳児期の鉄の欠乏」がよく取り上げられます。乳幼児期に鉄が欠乏すると精神的な発達や運動能力の発達がともに遅れるといわれています。だからといってどんどん鉄分を与えればいいというものでありません。離乳食を考えるときに鉄の欠乏を予防するためにどんな配慮が必用なのでしょうか。今月は乳児の鉄欠乏を予防するための工夫についてレポートします。

●鉄の不足は怖い

　鉄は生きた細胞のエネルギー代謝で中心的な役割を果たしています。鉄は全鉄量の７５％が血液の中に含まれているヘモグロビンの中あって、体中の細胞に酸素を供給する働きをしています。

　「鉄欠乏症」は世界的に見ても非常にポピュラーな栄養問題です。鉄が不足すると、貧血になり、体力が低下し、病気にかかりやすくなり、能力が全般的に低下します。

　乳児期は人生の中でも劇的にからだや神経系が発達する次期です。からだの成長には大きなエネルギーが必要となり、鉄が欠乏しやすい時期となります。鉄が欠乏すると乳児の精神能力や運動能力の発達に悪い影響が出るという研究報告があります。離乳期においては鉄欠乏症にならないよう、特別な配慮が必要です。

●生後５ヶ月ごろまでは鉄欠乏は起きない

　鉄は胎児期に体内に蓄積されています。生後から授乳期については乳児は母乳や乳児用ミルクの中に含まれる鉄を吸収して育つことになります。

　母乳に含まれる鉄は乳児用ミルクに含まれる鉄よりも少ないのですが、母乳は鉄の吸収率が高いため乳児用ミルクよりも不利というわけではありません。

　「鉄欠乏」は生後５ヶ月頃から起こり始め、その後も体内貯蓄率が減ってくるので生後９ヶ月以降から鉄欠乏症に対する注意が必要となってきます。

●ヘム鉄と非ヘム鉄

　鉄には動物などに含まれるヘム鉄と主に植物に含まれる非ヘム鉄があります。

　ヘム鉄は非ヘム鉄よりも効率よく吸収されます。非ヘム鉄は吸収効率が落ちるために、成分表から計算する値よりもうまく吸収されません。ただし、ヘム鉄といっしょに摂取したり、ビタミンＣを多く含む食品といっしょに摂取すると、非ヘム鉄の吸収効率が上がることがわかっています。

●やってはいけないこと

　鉄欠乏を避けるためには鉄分が多く含まれている食品を与えればいいのですが、それにはルールがあります。

１「母乳の代わりに牛乳」はだめ

　昔は牛乳を薄めて乳児に与えていたこともあったそうです。でもこれは間違いです。

　牛乳は含有されるカルシウムとリンと鉄で不溶性の複合物が生成されます。その結果、鉄が腸から吸収されることが疎外されてしまいます。また離乳期には食物アレルギーを誘発することにもつながります。牛乳を母乳の代わりに与えることは止めましょう。（調理の食材の場合は可能）

２　ばっかり食べ

　鉄の吸収を疎外する要因となるものは意外にたくさんあります。お茶のタンニン、野菜や果物に含まれるポリフェノール、さつま芋などに含まれる食物繊維、卵黄に含まれるタンパク質など、吸収を疎外する要因になる食べ物はたくさんあります。どれも、離乳期にはよく摂取するものばかりです。ある特定のものばかり食べる「ばっかり食べ」をすると、鉄の吸収が疎外される危険性が増します。いろいろなものを食べるようにして、鉄の吸収率が極端に下がらないように気をつけましょう。　

●保育所での鉄の摂取

　先ほど、鉄は成長期にはよりたくさん必用となるといいました。離乳期には体重１㎏あたりの摂取すべき鉄分は３才以上児や３才未満児より大きくなります。したがって、３才以上児の食材を単純に量を減らして３才未満児や離乳食に利用するという献立では乳児の鉄摂取量は不足してしまう可能性があります。

　ある保育園の給食について鉄の栄養価を調査したところ、

・３才以上児幼児食　９０％
・３才未満児　６５％
・離乳食　５２％
となっていました。もちろん、だからといって直ちに鉄欠乏症になるわけではありません。しかし、意外に離乳期の献立づくりには注意を要することがおわかりになると思います。

●鉄摂取率向上のための工夫

　さいごに、離乳食において鉄摂取率を向上させる基本的な方法についてまとめてみました。

（１）　調理においても乳児用ミルクを使用する（完了期まで）。
（２）　最強の鉄供給源であるレバーを積極的に使用する。
（３）　鉄の吸収を促進するビタミンＣを多く含む野菜や果物を使用する。
（４）　離乳期においても定期的に栄養計算を行って栄養素充足率をみて、献立を立案する。

どれも基本的なものばかりですが、離乳期の鉄欠乏症を予防するにも基本が大切です。ここで離乳期の初期から完了期ごとに、どんな食材を使うのが勧められるかを上げておきましょう。

（１）初期
・ほうれん草、豆腐、きのこなどを上手にごはんとあわせる。
・おやつにきな粉がゆを使う

（２）中期
・初期の食材に加えて納豆、レバー、ひじき、高野豆腐を使う
◎挽き割り納豆の納豆汁
◎とりのレバーはペースト状にして使う
◎高野豆腐は下ろし金でおろす

（３）後期・完了期
　中期の食材に加えて、より積極的に使っていく

　みなさんも離乳期の鉄の使い方について一度見直してみてください。